飲みだしたらやめられない?(薬の話です)

薬物には癖になって止められなくなるものがあります。アルコール、ニコチン、麻薬、覚せい剤などが代表的です。これらの薬物には依存性があり我々の心が支配される事で止められなくなってしまいます。よく血圧の薬でこの言葉が使われることが多いのですがどうしてでしょうか? 血圧を下げる薬には依存性は無く、心を支配することはありません。飲めば飲んだだけ効果があり、止めたら効果がなくなって元に戻るだけでリバウンドはありません。イメージとして頭痛に対する頭痛薬のような感じです。ではなぜ頭痛薬は飲みだすと止められないと言われないのに、血圧の薬は飲みだすと止められないと言われるのでしょうか? 血圧は生まれた時は上が70-80で、天国に行く頃になると上の平均が160ぐらいになります。血圧は上が135、下が85を超えると、下げた方が心臓、血管、脳、腎臓や寿命が長持ちすることがわかっています。体質にもよりますが、徐々に血管が硬くなって血圧が徐々に上がってくると、ある程度の年齢になると、血圧の薬を飲んだ方が老化が防げる方が半分ぐらい、いらっしゃいます。「飲みだすとやめられない」というとまるで薬に原因があるような言い方ですが、ある年齢を過ぎると血圧の薬を飲んだ方が老化を押さえることができるという事です。自分で減量、減塩やスポーツなど、自分を変えるようなアクションをすると血圧は下がりますので、血圧の薬の内服を遅らせることが可能です。勝手に血圧が下がる可能性は少ないので、何の努力もしないと、高血圧の素質のある方は、とある年齢で薬を飲んだ方がいい状態になります。薬を飲む、飲まないは個人の自由ですので、止めたくなればいつでも止められます。薬を飲まない元の状態に戻るだけです。ただ医師は努力しなければ血圧の薬が必要な状態がなくなる可能性が少なく、薬をやめるとリスクが増えるので止めない方がいいですよと言うのです。飲みだすと止められないから飲まない方の多くは、すでに血圧の薬を内服すべきハイリスクな状態になっているのに、薬を飲んでいないために老化が加速している場合が多いです。

コレステロールの薬も同様です。悪玉コレステロールが高い方、生理のある女性は女性ホルモンに守られますので160以上、それ以外の方は140以上、の方は卵を減らしてください。白身は蛋白ですが、黄身にコレステロールが入っていますので、目玉焼きなら黄身を捨てるといいですね。魚卵も減らしてください。運動を増やすと悪玉が減って善玉が増えます。頑張っても悪玉コレステロールが高い方は薬で下げることをお勧めします。ご両親とご先祖さまがどのような病気をお持ちだったかを調べることも大事です。ご両親とご先祖さまに、心臓、脳、腎臓、血管の病気の方がいらしたら、高血圧と高コレステロールは放置しないで自己努力あるいは薬で下げに行った方がお得です。逆にご両親とご先祖の皆様がガンで命を失っているようなら、がん検診を積極的に受けることの方が大事かもしれません。自分の人生ですから最後は自分で決めますが、どのような選択が自分にとって得なのかをよく考えましょう。下手な保険に入るよりずっと大事なことだと思います。 (爽心会 心臓クリニック藤沢六会 磯田 晋)