血圧の薬を始めるとやめられなくなる?

血圧の薬を始めるとやめられなくなる、これをまことしやかに言って、降圧剤を内服しないように誘導する友人、周りにいませんか?そういわれるとまるで薬に麻薬のように癖になる成分でも含まれていて薬がやめられない体に代わってしまう、と聞こえるのでしょうか?降圧薬には癖になる成分は入っていません。

生まれた時の上の血圧は70、天国に行くときの平均は上が160で、血管の加齢とともに血圧は上がっていきます。約半分の方は何歳かで血圧が130以上になって、降圧薬を飲むことによって老化を防ぎ、寿命を長くできることがわかっています。薬を飲むと長生きできます。では高血圧があるのに降圧薬を飲まないとどうなるのでしょうか?心臓、脳、腎臓などの病気になる確率が数倍に増えて、寿命が短くなるという事です。血圧の薬が必要で始めた方は、飲み続けた方が体に良く、病気が減り、長生きできることがわかっていますから、医師はやめましょうと言いません。今まで必要なかった薬を飲むのは老化を認める敗北だという気分で“血圧の薬を飲み始めるとやめられない”と表現するんですね。では飲み始めないとどうなるのでしょう、病気の発症が増えて寿命が短くなるということです。人生は自分の選択ですので、体に有益な降圧剤を飲む、飲まない、の選択は自分の権利です。ただ飲むべき降圧剤を飲まない間に血管、脳、心臓、腎臓は2-3倍の速度で老化していきますので、追い詰められてから飲んでも飲まなかった時の老化は取り戻せません。

ご自分で努力したい方はいらっしゃいます。体重を3kgぐらい落とすと血圧は10ぐらい下がりますので是非やってみるといいと思います。でも結果的に下がらなかったら血圧の薬は飲んだ方がいいですね。日本は世界最長寿国ですね、なぜでしょう?日本食がいいんですか?いえいえ日本の皆保険制度のおかげで降圧剤の必要な方の全てが降圧薬を飲めることが効いています。保険の無い国では薬と医療費用が貧しい方には払えませんので、飲むべき降圧薬が飲めないために早死にしてしまいます。血圧の薬を飲み始めるとやめられない、と言って始められない方は、医療先進国でない国でお金を持ちあわせない方と同じチョイスをしています。

東京から大阪まで行く用事があるとしましょう。若くて健康な方は歩いていくのもいいでしょう、でもお年をお召しになったら途中で行き倒れになってしまうかもしれません。新幹線や車で行く方が楽ですよね、薬は電車や車やタクシー、バスのようなものだと思ってください、必要なら使って楽に人生を安全に過ごす味方だと理解してください。

まとめ 血圧の薬には癖になるせいで止められなくなる成分は入っていません。ご自分がやめたければ自分の権利としていつでもやめられます。しかしながら年齢とともに血圧が上昇するのは自然の摂理ですので、自分の老いを認めないといった変な意地を捨てて、降圧薬という便利な方法を使って人生をより楽しく過ごしましょう。(爽心会 心臓クリニック藤沢六会 磯田 晋)