動悸がするときはお酒を控えましょう
動悸の多くは不整脈によるものが多いです。自分の親や祖父母が不整脈を持っていた方は、自分も同じ年頃になると不整脈を持つ可能性が高いと思ってください。不整脈の大きな原因は、冠攣縮という心臓の血管の収縮しやすい遺伝的な体質です。血管の壁には平滑筋という血管を収縮させる筋肉が入っていて、この平滑筋が収縮しやすい素質のある方と、収縮しにくい素質の方がいらっしゃいます。まあ5人に1人ぐらいは心臓に血液を送る冠状動脈の収縮が強い素質を持っていて、血管が収縮すると心臓の筋肉に届く血液が少なくなりますので、結果的に心臓の筋肉が電気的に老けて、不整脈を起こすようになります。
まず多いのは期外収縮という不整脈です。本来は社長さんである洞結節がリズム取りをして、部長さんである房室結節がリズムを引き継いで、社員である心筋を収縮させることで、心臓はドックン、ドックンと動きます。心房にある副社長さんや、心室にある社員さんが血の巡りが悪いことで傷ついて、社長のリズムに従わずに興奮して周りを巻き込んで心臓を収縮させるようになるのが、期(社長のリズム)、外(以外の)、収縮です。
心房から起きる期外収縮が連発してぐるぐる心房の中を回るようになると、社長の指令は伝わらずにバラバラのリズムとなり心房細動と呼ばれる、より重症の不整脈になります。心房細動では心機能は20%落ちて、脳梗塞のリスクが5倍に増えます。
この心房細動になりやすい状態をつくる習慣が飲酒です。アルコールには利尿効果があり、ナトリウムと体液を尿に出してしまいます。ナトリウムと体液の減少は血液の減少と濃縮を引き起こし、心臓の血管が攣縮を引き起こしやすくなり、心臓の血行を悪くして不整脈が出やすくなります。またアルコールの利尿効果はカリウム、マグネシウムという脈を整えるミネラルを減らしてしまい、不整脈が出やすくなります。よって動悸が気になる方は飲酒を控えたほうが安全です。それでも飲んでしまったら、減ってしまった体液、ナトリウム、カリウム、そしてマグネシウムを補充しないといけません。ナトリウムの補充にはスポーツドリンク、経口補水液、味噌汁、スープ、塩飴が有効です。カリウムの補充には野菜ジュース、トマトジュース、バナナなどが有効です。マグネシウムの補充には豆腐、海苔、アオサ、モズク、シジミ、アサリなどが有効です。
動悸がおきるようになったら、apple watchやホルター心電図と呼ばれる1日心電図などが検査に有効です。期外収縮が多ければ禁酒など節制に心がけましょう。そして心房細動が確認されたら、まずは脳梗塞予防の薬など不整脈に対する治療を開始して、次に心房細動のカテーテル治療であるアブレーションを検討しましょう。飲酒以外では喫煙、カフェイン、高血圧、糖尿病、高コレステロール、甲状腺、スポーツ心臓、心筋症、弁膜症、心虚血、睡眠不足、ブルーライトなどが不整脈の原因になりますのでご注意ください。
まとめ 動悸を感じる方は飲酒を控えましょう。どうしても飲んでしまう方は、スポーツドリンク、野菜ジュース、トマトジュースなどミネラルの補充を意識して不整脈が悪化しないように気をつけつつ、早めに1日心電図などで検査しましょう。(爽心会 心臓クリニック藤沢六会 院長 磯田 晋)
