大動脈蛇行と言われたら

健康診断の胸部X線で大動脈蛇行と指摘されることがあります。一言で言うと大動脈の老化の所見です。

大動脈は心臓から体に血液を運ぶ太い血管です。大動脈は心臓の出口から出て一旦上に向かい、腕、首や頭に血液を送る枝を出した後、下に向かいます。胸と腹部を通って足に血液を送る枝に分かれます。大動脈は丈夫な組織でできていますが、いつも血圧という強い圧力がかかるので血管外壁の血流維持が大変です。また血管内壁は血流ストレス、コレステロール、糖、酸化物質などにさらされます。

大動脈が蛇行するとは、大動脈が長くなったということです。体は大人になると成長しませんので、大動脈が長くなると行き場がなく、くねくねと蛇行します。蛇行する人の胸部X線の画像で見ると、心臓から出て首に向かう上行大動脈は体の右に張り出して、首から下に向かう胸部大動脈は体の左側に張り出して、あたかも?ハテナマークのような走行をします。「大動脈の?ハテナサイン」と小生は呼んでおりますが、肉体の老化に対して大動脈が若かりし自分の老化に疑問を感じている訳はございません。

もっともよくある原因は血圧が高いことを放置、あるいは気づかないで、十分な睡眠をとらずに働きすぎてしまった事でしょうか。血圧が高いと血管は伸ばされて、横に延ばされると血管の径が大きくなって動脈瘤に、縦に延ばされると大動脈蛇行になります。一度伸びると縮むことは少ないですが、進行を抑えることはできますので、血圧高めの方は降圧して、残業はほどほどに、睡眠時間を十分とってください。

次の原因は遺伝です。家族親戚に大動脈解離、大動脈瘤、心臓弁膜症、高身長、手が長い、指が長い、体がとても柔らかい方はいらっしゃいませんか?体の弾力を担当する弾性線維という組織が柔らかい体質の家系がいらっしゃいます。大動脈の蛇行を指摘された方は親兄弟、祖父母、御親戚の事を聞いてみてください。遺伝の素質のある方は十分な降圧が必要です。

次の原因は血管を障害する生活習慣病です。煙草を吸うと血管の内皮細胞が脱落して血管壁が障害を受けます。血管壁の血流がニコチンによって収縮して血管壁がもろくなります。糖尿病、高脂血症、高コレステロール血症、高尿酸血症でも同様の変化が進行します。

大動脈の横方向の拡大は破裂や大動脈解離を起こしやすくなり、縦方向の拡大による大動脈の蛇行は破裂の原因にはなりませんが、大動脈解離のリスクは高まります。また血管の老化が進んでいることは、血管が重要な臓器である、脳、心臓、腎臓などが老化したり破綻したりしやすくなります。

胸部X線で大動脈蛇行を指摘された方は、採血、心電図、心エコー、家族と親戚の病気の確認などを通して、老化しつつある血管が老化しにくくなる方法を探しましょう。(爽心会 心臓クリニック藤沢六会 磯田 晋)