息切れに効く降圧薬

歩行時や坂階段での息切れには循環器としていくつかの要因が考えられますが、1つ目は運動時の高血圧です。普段の血圧の上が140/の方が、運動するとアドレナリンや交感神経の緊張によって全身の血管が収縮して血圧の上が220/と約2倍近くに上がってしまう方がいらっしゃいます。血圧の上は収縮期血圧と呼ばれ、心臓の負荷そのものです。血圧を重しで例えれば、心臓が毎回14kgの重しを持ち上げているときに、運動するとこれが22kgに増えてしみますので心臓は苦しくなってこれが息切れの原因となります。普段から運動を心がけるとアドレナリンや交感神経の興奮が軽減して運動時の血圧が下がりますので運動を心がけていただくとして、降圧剤全般で普段の血圧を下げると、運動時の血圧も運動時の血圧も下がり、心臓の負担が軽くなって息切れが減ります。

2つ目は狭心症の一種である冠攣縮です。運動時のアドレナリンや交感神経の緊張で冠状動脈が収縮しやすい方は、心臓の血の巡りが悪化して、心筋の虚血や機能の低下で息切れを起こします。体の血管に加えて、心臓の血管を広げる狭心症治療効果のあるニフェジピン(アダラート)、ベニジピン(コニール)やジルチアゼム(ヘルベッサー)は運動時の血圧を下げて心臓の負担を減らしながら、心臓の血の巡りを改善させることで運動時の息切れを改善します。

3つ目は頻拍です。アドレナリンや交感神経の興奮が脈を過剰に速くしてしまう方は、脈の速さによる心臓の負担が増えて息切れの原因になりますので、降圧効果は弱いですが、脈をゆっくりにするビソプロロール(メインテート)やカルベジロール(アーチスト)などのベータ遮断薬などで運動時の脈の上りを抑えることで心臓の負担が軽くなって息切れが減ります。

4つ目は体液過剰や弁膜症による肺静脈のうっ滞です。運動時に心臓が十分機能しないと手前の肺静脈に血液がよどんで肺がおぼれそうな状態になります。心臓喘息といってヒューヒューゼイゼイする方もいます。体液を減らすスピロノラクトン(アルダクトンA)やトリクロルメチアジド(フルイトラン)などの利尿降圧剤を用いることで運動時の肺静脈うっ滞が改善すると息切れが減ります。

運動時の息切れの原因を調べる検査はまずは運動負荷心電図です。運動時の血圧、心臓虚血、脈拍を調べることによって息切れの原因がわかります。次は心臓超音波で、血のよどみを起こす弁膜症や肺静脈につながる左心房のうっ滞を調べることができます。もう一つは1日心電図であるホルター心電図でも虚血と脈拍を調べることができます。

まとめ 坂や階段の息切れを運動不足や年齢のためとあきらめずに、降圧薬の選択によって改善する可能性がありますのでご相談ください。(医療法人爽心会 心臓クリニック藤沢六会 磯田 晋)