体液の管理
- 体液とは
体液とは体の中を流れる血液、リンパ液などを指します。体液は冷え性、頭痛、めまい、立ち眩み、血圧、倦怠、痛みなどに大きな影響を与えます。もともと生物はアメーバのように生まれて、海水を体液として活動していましたが、大きな生き物になると栄養、呼吸、老廃物を処理するためには海水からしみこむだけで不十分ですので、体内に海水の代わりに体液を取り込んで、陸に上がってきたと考えるといいと思います。
体液が不足するとどうなるのでしょう。血管が収縮することで大事でない場所には体液を送らずに、脳や心臓と言った大事な場所の体液を保持します。血管が収縮した場所の血流は悪化します。手足なら冷えますし、毛根は血流不良で毛が抜けたり、耳の奥の血の巡りが悪化すれば眩暈が起きて、頭の血管が収縮して三叉神経に血が廻らなくなると頭痛が起きたり、体の血管なら腰痛や肋間神経痛が起きたり、心臓の血管が収縮すると息切れ、締め付け、胸痛が起きるようになります。
2. 体液の管理は人それぞれで異なります
よく塩分を控えろと言います。これは塩分を過剰に摂取すると体液が増えすぎて血圧が上がり、脳、心、腎などの障害が起こりやすくなります。血圧が高めで体重が多めで肉も魚もいっぱい食べて冷え性なんてない、そして血圧の薬は飲みたくない、そんな方は塩分を控えた方がいいですね。過剰な体液を減らすことで血圧が下がり、心臓と血管と脳と腎臓を長持ちさせることに貢献します。採血をすれば塩分濃度はわかります。自分のNaが多いのか少ないのかは見ておいた方がいいですね。
塩分の他に蛋白や赤血球も体液が増える方向に働きます。若い女性に冷え性が多いのは生理の出血で赤血球が減って体液の量が減ってしまうのが一つの理由ですね。肉魚をしっかり食べると蛋白の濃度が上がり、体液の増加に貢献しますね。健康のために肉を減らして塩分を控えて、結果的に冷え性になっている方は実は冷え性に対してあべこべのことをやっていることになります。自分に合わせた適度な体液量の管理が大事です。
3. 体液を増やしたほうが良い方
華奢で痩せ気味、顔色はあまりいい方ではない。冷え性で、頭痛になることが多く、首背中胸に痛みやコリが多い。血圧は低めで、めまいや立ち眩みが多い。生理出血が多い。健康に気を使い、塩分は控え、肉は少なめにしている。息切れ、胸の締め付け、胸痛などを感じることがある。このような症状の方は体液を増やして血管を安定させましょう。
4. 体液を減らしたほうがいい方
筋肉質で太っている。赤ら顔の方。体に熱がこもって汗っかきの方。頭痛、冷え性、神経痛とはあまり縁がない。血圧が高めだが降圧剤を飲むのが嫌、あるいは血圧の薬を減らしたいと思っている方。
5. 体液を増やす方法
まずは塩分を取る事ですね、とは言っても塩分だけではバランスが悪いので、エブリサポートのようなNa,K,Mgを含んだ塩飴、具沢山の味噌汁(野菜がK、豆腐がMg、味噌にNa)、OS1のような経口補水液を摂取するのが安全で手軽です。体液を増やすために水分を取りましょうとよく言いますが、ミネラルを取らないで水分だけ取ると、低Naや低Kになり体調不良、不整脈、熱中症や夏バテを引き起こしますので、まずはミネラルを十分とるとのどが渇きますので渇きを満たす水分を取ってバランスが取れます。塩飴1つが大体水分200mlを必要としますね。
糖質を摂取するのも一時的には体液の浸透圧をあげて体液を増やす働きがあります。アイスクリームショップには水が置いてありますよね、糖分で上がった浸透圧によって喉が渇きますので水分を取って体液不足を補います。暑い夏の日に喫茶店で甘いジュースを飲むのは結構、的を得ています。ただし糖を摂取するとインスリンが膵臓から分泌されて上がった血糖が下がりますので、糖の摂取による体液の補充はせいぜい2時間しか持ちません。甘いものを取ると頭痛や立ち眩みが治るのは体液の一時的な上昇で虚脱していた頭の血管や脳の血管が満たされるからですね。
浸透圧を保つ大事な要素がタンパクです。赤身肉、魚、魚肉ソーセージ、ちくわ、カマボコ、はんぺん、豆腐、納豆、豆乳、牛乳、プロテインドリンクなど体液を増やして循環を安定させるのに有効な食事ですね。タンパクを十分摂取すると筋肉を作りやすくなります。筋肉は血管を含みますので、血管が増えることは体液量を増やして負荷に強いからだを作るのに役立ちます。
血液の量の半分近くは赤血球で占められています。生理の出血が補充されないと血液量は減って、さらに足りない分は水分で置き換えられますので体液が希釈されて不安定になります。血液の原料は鉄ですので、鉄を豊富に含む食品を摂取しましょう。ブロッコリー、小松菜、水菜、チンゲン菜などの緑の野菜(ほうれん草は尿路結石のシュウ酸を含みますので湯がいてからとってくださいね)やレバー、シラス、小魚などを積極的に摂取しましょう。
体液を増やす薬物では漢方が手軽です。カンゾウという成分を含む補中益気湯、葛根湯、人参養栄湯などは体液を増やしつつ免疫を上げます。カフェインは利尿効果が強いのでカフェインレスがお勧め。ブルーライトは筋肉や血管の収縮で血管床を減らして体液の貯蔵量が減るのでできるだけカットとして、血管を広げる魚、魚肉ソーセージ、ちくわ、かまぼこ、はんぺん、大豆食品、豆腐、納豆、オリーブオイル、ゴマ油を摂りましょう。
6. 体液を減らす方法
減量すると体液が減ります。塩分を減らすと体液の量が減ります。体液が減ると血圧が下がり、足のむくみが取れます。カフェインやアルコールは利尿効果があり体液を減らしますが塩分、K、Mgなどの大事なミネラルも尿中に排泄しますので体液のアンバランスは起きやすくなります。アルコールは糖質の負荷が多く、内臓脂肪を増やして太りますので結果的に血圧は上がることが多いです。体液を減らす薬は利尿剤です。降圧利尿剤は塩分を減らして体液を減らすことで心臓の拍出量を減らして血圧を下げる効果があります。また低ナトリウムになれることで塩分について薄口になり、塩分摂取が少なくなる効果があります。塩分とカリウムを捨てるサイアザイドやループ利尿剤、塩分を捨ててカリウムは体内にキープする利尿剤MRB、糖質を排泄しつつ水分やミネラルを排泄する利尿効果のある糖尿病薬SGLT2、水分だけを捨てる利尿剤サムスカなどいくつかの種類から選ぶようになります。
7. まとめ 体液の管理はバランスが大事
体液を適切に管理することは血管と血流の安定を通じて、脳、心臓、腎臓、筋肉、神経、頭皮、頭部や四肢の状態を安定させ、痛みを減らし、血管や筋肉のけいれんを防ぎ、倦怠感を減らす効果があると考えられます。塩分は毒だと言わんばかりに白黒はっきりさせることが好きなマスコミの方は多いのですが、塩分は過剰に摂取すると血圧をあげる一方で、不足すると熱中症、意識障害、頭痛、冷え性、腎臓をはじめとする全身臓器の血行障害をきたすことがあります。大事なことはバランスですので、血液やリンパ液の量、蛋白、カリウムやマグネシウムなどのミネラル、薬剤の使い方について、体重、血圧、脈拍数、採血結果、胸部レントゲン、心電図、脈波計測、心エコーなどで体液のバランスをモニターしながら適切な状態を探していくことが大事です。(爽心会 心臓クリニック藤沢六会 磯田 晋)