体の痛み 内科にできる事 ④ 治療

炎症による痛み

痛みに対する治療は原因によって異なりますが、風邪による頭痛、のどの痛み、打ち身や疲労による筋肉痛など物理的な炎症によって急性に起きている場合は抗炎症薬が有効です。アセトアミノフェン(カロナール)は胃に優しい炎症止めです。ただし深酒をする方は肝障害をきたすことがありますのでご注意ください。カロナールではちょっと効き目が不十分という方はロキソプルフェン(ロキソニン)が手軽です。胃が荒れやすい事と、熱があり脱水状態では腎障害に気を付けることが必要です。胃の弱い方は胃薬と一緒に内服し、脱水がないように気を付けて、尿の色が黄色く濃くなっていたら脱水ですのでご注意を。セレコキシブ(セレコックス)はロキソニンより胃に優しい鎮痛薬です。抗炎症薬は原因を取り除くわけではありませんが、炎症は炎症を呼びますので、一度炎症を抑えることは痛みの悪循環を防ぐためには有効です。整形外科の先生はステロイドの局所の注射や麻酔薬によるブロック注射を使用しますが、痛みの悪循環を取るのに効果があります。西洋の薬は症状を取る対症療法ですが、一方、風邪のvirusなどに対して原因治療をする場合は、葛根湯や麻黄湯による免疫上昇、血流改善、体温上昇による抗virus効果を利用しますが、痛みを緩和する効果もあります。漢方を利用するとロキソニンなどの痛み止めを使う頻度はずいぶん減ります。

血行障害による痛み

ブルーライトによる眼精疲労、緊張、脱水、睡眠不足、カフェイン過剰、ミネラルのアンバランス、高血圧など様々な原因で、血行障害、筋肉の緊張によって起きる神経痛には、環境を整える複数の要因の改善が必要です。ロキソニンのような抗炎症薬が効かないときは血行障害を考えましょう。原因と思われる原因を除去したうえで、血流改善の為には、まずイワシ油のEPAの投薬で血管拡張と血流安定を計ります。体液の増加と血管拡張のためには風邪薬の葛根湯が有効で、継続的な体液貯留による血行改善には補中益気湯も有効です。痛みの原因についてウィルス感染が疑われる場合は葛根湯あるいは麻黄湯もよく効きます。慢性の疼痛に対する内科の最初のアプローチとしてはEPAと葛根湯の組合わせが安定した効果を持ち、頭痛、肩こり、腰痛、四肢の痛みは半分以下になる事が多いようです。高血圧の方は適切に降圧すると、頭痛や体の痛みはかなり改善します。

整形外科の先生はプロサイリンなどのプロスタグランディン系の薬をよく使います。降圧が必要な高血圧の患者さんではα遮断薬という末梢血管を広げる降圧薬が神経周囲の末梢血行改善に使えます。他に血管を安定化するビタミンEも用いられます。強心効果と抗血小板機能と血管拡張効果を持つプレタールは有効ですが、頻脈や上室性期外収縮誘発の副作用に注意します。体液を増加させると神経痛を起こしている末梢の血流は改善しますが、手軽なのは経口補水液です。ただ水分を取るだけではまず吸収が遅く、次に体液の希釈が利尿を誘発して体液が増えません。塩分、糖質、カリウムやマグネシウム、蛋白、血球の存在は血流維持に役立ちます。ですから味噌汁、スープ、そばうどん、ラーメン、野菜、果物、魚、赤身肉、鉄分、食事全般の十分な摂取が末梢血流を改善して痛みの軽減に役に立つのです。高血圧を気にして塩分制限が広まってはいますが、痛みで苦しむ方に減塩は逆効果の場合もありますのでご注意を。低周波の電気刺激装置も痛みの改善に効果があります。電気刺激は筋肉を動かして血流を改善して、痛みを減らすマイオカインを分泌させると考えられます。針やマッサージも悪循環に陥った神経と筋肉緊張をリセットする効果がありそうです。

筋肉の攣縮に伴う痛み

筋肉のコリは筋肉緊張→血行障害→疼痛→交感神経興奮→血行障害+筋緊張→筋肉内環境悪化→神経障害というプロセスで痛みを加速していきます。過剰な筋肉の緊張を抑える薬は痛み止めと並んで悪循環を断ち切るのに有効です。筋肉の収縮を抑制する漢方薬は足の痙攣に効く芍薬甘草湯は筋肉のコリをほぐします。芍薬甘草湯は即効性があるので足がつってから飲んでも間に合いますし、毎日夜中に足がつる方は眠前に飲みますし、ゴルフ帰りに足がつって運転に差し支える方は帰りの車に乗り込む前でも有効です。肩の凝りには葛根湯が有効ですがどちらかと言えば血行改善の要素が大きいかと思います。筋肉のコリをほぐす西洋の薬は筋弛緩剤で、ミオナール、テルネリン、リオレサールなどが用いられますが、痛みを取るのに有効です。

精神的緊張による痛み

緊張は自律神経の興奮をきたし、全身の血行障害をきたし、神経の障害に繋がります。また痛みに対して過敏になりますので、緊張と痛みは悪循環を引き起こします。ロフラゼプ(メイラックス)のような超長時間作用型の安定剤は癖になりにくくて内科では使いやすいです。切れ味がマイルドで効いた感じがさほどでもない事と、完全に切れるのに1週間かかるので、翌日に切れて飲まなきゃ、という感じになりにくいので薬に依存している感じになりにくいと思います。1週間継続すると安定しますので、昼間の眠気があれば半量にしたり隔日投与にします。頓服ではデパスのような、より短時間の薬も用いられます。

神経の障害による痛み

ロキソニンの効かない痛みには血行障害に加えて神経の障害を考える必要があります。整形外科ではプレガバリン(リリカ)という薬が良く用いられますが、めまい、立ち眩み、眠気の症状が起こりやすいようです。内科では最近はミロガバリン(タリージェ)という後発の薬が良く用いられます。2.5mgを朝夕2回で始めて10点の痛みが8点になればしめたものです。5mg→10mg→15mgと増やせれば痛みが2-3/10点になり、嫌みから解放されることになります。眠気と立ち眩みが副作用ですので、副作用が出る方は夕のみの内服にするのも一つの方法です。すべり症、脊柱管狭窄症、坐骨神経痛による腰から足の痛み、後頭神経痛の痛みには3-4割の方に有効で、中には人生が変わるほど効く方もいらっしゃいます。

痛みの治療には、栄養、生活習慣改善、血流改善、筋肉の利用、痛み止め、自律神経調整、神経障害薬など複数のアプローチがありますね。自分に合った治療を探していきましょう。