体の痛み 内科にできる事 ③ 筋肉と運動

神経と筋肉の関係

肩こりは目の使い過ぎ、ブルーライト、タイピングなどで起きてきます。頭がぐらぐらしていると物をじっと見られませんから、首周りの筋肉を緊張させて目を固定することが筋肉を疲れさせるのと同時に、筋肉の緊張が血流の流入を妨げてしまいます。筋肉の緊張が強まると筋肉は自分がちぎられないための反射でさらに収縮力をアップさせますので持続的な筋肉の収縮と血行不良が起きます。血行不良で筋肉に乳酸が蓄積してさらに固くなり神経の血流が不良となり強い肩こりと痛みが発生します。筋肉の緊張→血行障害→疼痛→交感神経の興奮→血行障害+筋緊張→筋肉内環境悪化→神経障害、という悪循環に入っている状態を改善するために、我々は目を休め、カフェインを控え、ブルーライトをカットし、仕事やゲームを休み、体操をして、味噌汁を飲んだり、ミネラルを補充し、豚肉と野菜ジュースを摂り、十分休息し、湿布を張ったり、痛み止めを飲んだり、入浴や入浴剤で血流を改善し、マフラーで保温をし、筋肉のコリをほぐす薬を飲み、マッサージをして、低周波電気刺激を用いて、痛み止めを飲み、それでも改善しないと神経障害の薬や安定剤を用いるようになります。

筋肉を鍛える事は痛みのコントロールに大事な課題です。筋力が低下すると骨に負担をかけることになりますので、筋肉を育てましょう。お勧めの運動は太極拳やヨガのようなゆっくりと、インナーマッスルと呼ばれる深いところの筋肉を鍛えることが大事です。テレビ体操でももちろん構いません。痛みがあるのなら痛みをかばう場所の筋肉を鍛えましょう。首肩の痛みなら腕を後ろに良く振って歩く、膝なら足の持ち上げ10秒を左右10セット、腰ならゆっくりとした体ひねりですが有効です。筋肉を育てるとそれに伴って新しい血管が生えることになります。新しい血管は柔らかい血管ですから全身の動脈硬化を改善し、血の巡りを改善します。もちろん神経にとって血行が改善すれば痛みが取れるチャンスがあります。

折角運動しても蛋白を十分摂取しないと筋肉は育ちませんので、魚、赤身肉、豆、豆腐、納豆、牛乳、豆乳、プロテインドリンク、ちくわ、かまぼこ、チーズ、魚肉ソーセージなどを積極的に摂取しましょう。蛋白だけですとビタミンやミネラルが不足しますので、野菜(Kとビタミン)、豆腐(Mg)、味噌汁(Na)も積極的に摂取しましょう。お菓子の代わりにチーカマや魚肉ソーセージを摂っていただきたいですね。

筋肉の使用による熱の産生と血流の改善

筋肉が収縮すると熱を産生します。また筋肉の使用に伴って発生した2酸化炭素が末梢血管を広げ、筋肉内の血流が改善します。筋肉の血流の改善は近くを走る神経の血流を改善します。有酸素の運動をしている状態では環境は悪化しませんが、無酸素の運動をするようになると乳酸などで神経の環境を悪化させてしまいます。強い筋肉の収縮には無酸素運動を伴いますので、保温と休息が必要になります。多少の足腰の痛みが運動をすると治ってしまうことは神経周囲の血流の改善による要素がありそうです。

運動や理学療法による改善

腰痛などの痛みには太極拳、体操、針、マッサージ、入浴、温泉、入浴剤、電気刺激などが有効です。筋肉を使うことによりマイオカインという鎮痛物質が筋肉から出るといわれ、マイオカインには脳を幸せにする働きもあるようです。筋肉を利用することは筋肉の血流を改善し、同時に神経の血流を改善することになります。関節の痛みについては周囲の筋肉を鍛えることで、関節の負担が減って、関節周囲の血流が改善します。

運動後の痛み

筋肉痛の多くは、無酸素呼吸による乳酸の蓄積が引き起こします。運動を開始するときは筋肉が温まっていないために血管が開ききっていませんから、準備体操や最初の負荷を少なめにして、体が温まってきたら負荷を徐々に強くしましょう。運動後にすぐ止まると筋肉の温度が低下して血行が不良となり、乳酸が蓄積してしまいますので、乳酸がたまらない有酸素運動のレベルを保ちながらゆっくりと整理運動を行いながら血流を保ち、乳酸を洗い流しましょう。運動後の入浴は筋肉の温度を保ちつつ酸素消費を少ないレベルで保ち、乳酸を洗い流すのに有用ですが、入浴中にすべての乳酸は処理できませんから、入浴後もタイツや腹巻のような何かで保温して湯冷めを防ぎ、乳酸の処理を数時間から1日継続できれば、運動翌日の筋肉痛からは解放されます。

痛みの原因は様々ですが、筋肉を使うことで軽減することが多いです。痛みが出現したら安静にするのは急性期の1週間以内にとどめ、そのあとは積極的に動かして、蛋白摂取、血行改善を加えながら痛みを軽減しましょう。(爽心会 心臓クリニック藤沢六会 磯田 晋)