入浴のメリットとリスク
入浴は日本の優れた習慣で、日本人の寿命が長いことに少なからず影響を与えていると思いますが、最近お湯の温度、半身浴、ヒートショック対策などが語られますね。入浴のメリットは衛生、免疫、リラックス、血行改善、運動の代わり、などです。かつて結核患者のいる病院では大浴場があってこれに入ってから帰りましたが、家に結核菌を持ち込まない、体温を上げて免疫を上げる、などが期待されたのでしょう。残念ながらこの風習は現代ではすたれてしまいましたが、体温が上がることによって体内のウィルスや細菌の生育環境が悪化しますのでちょっとした風邪は熱いお風呂に入ると治ってしまいます。
さて入浴の注意点は何でしょう?お湯の温度を41度迄とか、半身浴、長湯しないとか消極的な意見が多いようですが、これは循環に与える影響を少なくして安全を確保するということです。運動で負荷をかけすぎるとリスクがあるので軽い運動にしましょう、と同じことで、必ずしもすべての人に必要ではありません。入浴のメリットとリスクは運動と同じで表裏の関係ですので、自分に合わせて注意することが大事です。
さて入浴すると体表の血管が開いて血管抵抗が下がります。血管抵抗が下がると心拍数と心拍出量が上がり、皮膚、皮下、筋肉への血流が増えます。入浴後に心拍を測ってみると入浴が自分の循環に与える影響がわかります。例えば心拍が10%上がると、心拍出量も10%上がり、血管床が10%増えます。元の血管床が4Lだったとすると400ml血管床が増えますので400mlの血液、体液の余裕が必要だということになります。入浴する前に経口補水液を1-2杯飲む、あるいは塩飴を1-2ケなめてから入ると入浴時の血管拡張によって起きる体液不足、脱水状態、低血圧による眩暈、動悸、胸部不快を防ぐことができます。入浴が循環と血液量に与える影響は、いわば軽めの運動、飲酒、屋外活動に匹敵します。ではどのような方が気を付ける必要があるのでしょうか、冷え性で血管床が閉まっている方、狭心症を持っていて心臓の対応能力が低い方、運動不足の方、運動すると息が切れるかた、動悸になりやすい方、飲酒後の方、炎天下などで長時間活動した方、飲まず食わずの方、逆に食べ過ぎてお腹の臓器に血流を持っていかれている方、といったところでしょうか。リスクのある方や体調に問題のある方は入浴前に経口補水液を摂取したり、入浴を軽めにするなどの工夫が必要です。
入浴のメリットとリスクは運動のそれと似ています。体液の不足がないようにすること、自分に合った温度、時間、準備、環境について考えて安全な入浴ライフを楽しみましょう。
