失神 視界が狭くなる 目の前真っ暗

気を失ったことはありませんか?脳の血流や酸素供給の低下、ミネラルや血糖など代謝の異常、脳の電気回路の異常により、脳細胞が活動を低下させて意識が低下することがあります。血液や体液の不足、不整脈や狭心症による心機能の低下、脳血管の障害、てんかんなどが原因として考えられます。失神しそうなことを前失神とも呼びますが、世の中ではよく貧血と称されます。厳密には貧血は血液が薄い事で、まあ貧血があると前失神を起こしやすく、脳貧血と呼ぶならまあ違和感はありません。

若い方の失神で多いのは、起立性低血圧といって、立ち上がった時に重力で血液が下半身によどんでしまい、心臓に帰って来る血液が足りなくなるために血圧が下がって脳の血流が低下してしまう状態です。まずは血液の量が少ないと起こりやすいのですが、女性の生理出血や鉄の不足による血色素の不足が一つの原因です。夏の発汗が多い事や朝食を抜くことによる、塩分や糖質やミネラルの不足で起きる浸透圧の低下は血液の量を減らしますのでこれも原因になります。運動不足、睡眠不足やブルーライトの浴びすぎなどによる自律神経の失調も血管の緊張を整える事が上手にできなくなり、結果的に血圧が下がってしまいます。冷え性や狭心症といった体や心臓の血管が収縮しやすく普段は体液少な目でバランスをとっている方は、緊張、ストレス、運動、入浴、食事などによって血管の緊張が失われたときに血圧が下がって失神を起こします。失神の一歩手前では視野が狭くなる、目の前が暗くなるなどの症状が出ることがあります。コンサートやプロポーズで失神してしまう方は、冠攣縮といって若い人に多い体質からくる狭心症によってストレスによって冠状動脈が収縮して心機能が低下し、血圧が下がって失神してしまうことを考えます。対策としてはまずは体液を増やすことですから、塩分をしっかりとって血液と体液を増やす。生理出血が多い方は鉄剤を飲んで血色素を増やすことが大事です。ご両親のどちらかが狭心症をお持ちの方は、50%の確率でその体質を受け継いでいるでしょうから、冠状動脈を収縮させないためにはカフェイン、ブルーライト、睡眠不足、運動不足を避け、塩、野菜、海産物、豚肉、魚、練り物、大豆食品、オリーブオイル、ゴマ油を摂取して歯を良く磨いておくことが必要です。検査としては1日心電図であるホルター心電図や運動負荷心電図が有用です。生まれつきの心臓の病気で失神を起こしやすい方もいらっしゃいますので、一度心エコーを拝見しておくことも必要です。幼少期にはてんかん、発熱、脳腫瘍、インフルエンザによる脳障害なども失神の原因となります。

壮年の方の失神では、若いころの失神の原因に加えて、生活習慣が影響してきます。まずタバコは狭心症の体質を持っている方の冠状動脈の収縮、冠攣縮を増強します。息切れ、胸部の締付け、胸痛、失神が起こりやすくなります。次に飲酒も失神を起こしやすくする原因です。アルコールは利尿効果を持ち、トイレが近くなりますね。血液の水分が尿中に排泄されて血液の量が減り、血管が開いて血圧が下がりやすくなり、尿にNa,K,Mgといった循環と心臓にとって重要なミネラルが失われ、熱中症のような状態を作り、循環が虚脱して失神を起こしやすくなります。糖質やアルコールの過剰によって中性脂肪が極端に高くなると、今度は血液がドロドロになって脳の血流が一過性に障害されて失神を起こす可能性が出てきます。採血によって糖尿病や脂質異常などの脳血流を傷害する可能性のある体の中の代謝の問題を調べる必要があります。

ご高齢の方の失神では、加齢に伴う脳血管の障害、心臓の冠状動脈や電気系統の障害、弁膜症や気候の影響による失神を考える必要があります。脳血管の障害はMRIやCTを用いて脳血管障害の有無を見ます。心臓の冠状動脈の障害は狭心症あるいは心筋梗塞を引き起こしますが、心臓の能力の低下に伴って脳の血流が悪化すると失神を来しまので運動負荷心電図試験が必要です。心臓の電気的な障害によって心臓が5秒以上止まるのも失神の原因になります。ホルター心電図という1日の心電図観察で、心臓が5秒以上止まっている事が見つかるとペースメーカーという器械を入れて心臓が止まりそうな時に心臓を刺激して改善させる方法があります。大動脈弁の狭窄や逆流でも脳の血流が低下して失神することがありますので、1度は心臓超音波検査をうける事が必要です。熱中症でも失神することがあります。熱中症では汗で体内の塩分が低下すると低ナトリウムは意識障害をおこします。また塩分の不足は体液の不足を起こしますので血圧が低下して失神することもあります。また心房細動という不整脈では心臓の中の血栓が脳に飛びやすくなりますので脳梗塞に伴う意識障害や麻痺をおこす頻度が高くなります。 失神のまとめ: 年齢により抑えるポイントは異なりますが、てんかん、脳腫瘍、インフルエンザによる脳障害のように脳に問題がある場合、脳血管の問題、心臓の虚血、不整脈、心臓弁膜症、熱中症や貧血のような体液の不足、糖尿病や脂質異常による代謝の問題による血液ドロドロ、など幅広い範囲の問題が失神と関連します。代謝、心臓、脳について原因を考えていく必要があります。(爽心会 心臓クリニック藤沢六会 磯田 晋)