しびれ

痺れ(しびれ)とは、痛みの知覚に異常をきたしている状態で、神経の障害の一つです。しびれがあるのは神経あるいは神経を取り巻く環境に異常が起きている状態です。

正座すると足がしびれてきます。正座によって血管が圧迫されて神経の血行障害を起こして神経が正常に作動しない状態になったためです。

甘いものを食べすぎると舌がしびれたり痛くなったりすることがあります。糖質の一部は粘膜から直接吸収されて代謝されますが、ビタミンB群が足りないと代謝の経路が途中で止まり、神経あるいは神経周囲の組織が酸性状態やエネルギー枯渇の状態になり、神経が障害されるためです。ビタミンBは胚芽や豚肉に豊富に含まれます。白米やアルコールだけの生活で陥る脚気という神経の異常、体液の酸性化、心不全を起こす病気はビタミンBの欠乏により起こります。

首、腰の骨や靱帯などに異常があってしびれる時もあります。手足のしびれを感じる神経の本体は脊髄にあり、骨の中で守られていています。神経は軸索という触手を、手足の先まで伸ばしています。神経の通る途中で骨、筋肉や靭帯(スジ)による圧迫を受けると神経が血の巡りの不良などにより誤作動してしびれを感じます。足がしびるときに神経軸索の末端がある足に湿布を張っても効かないことが多いです。これは神経軸索の障害が末端ではなく、脊柱管狭窄、すべり症、椎間板ヘルニア、手の靱帯の障害などによって神経軸索の途中経路で起きているためです。

神経を取り巻く様々な環境が悪くなるとしびれは起こります。糖尿病の方は神経の代謝、栄養の不良と、血の巡りの悪化によってしびれが起きます。

脳やせき髄にある神経細胞そのものの障害でも知覚の異常は出現します。脳梗塞、脳出血、脳動脈硬化などにより障害が起きると、障害を受けた脳が担当する体の広い範囲でしびれを感じることがあります。脳神経も末梢神経同様に血流、栄養や呼吸などの多くの環境の影響を受けています。

神経に大事なビタミンにはビタミンB群のほかに葉酸があります。緑の葉を食べることにより葉酸は供給されます。野菜が苦手な方は野菜ジュースを飲みましょう。

高血圧や動脈硬化は血行障害を起こします。血圧が高いと血が廻りそうな気がする方もいらっしゃるかもしれませんが、血管が締まって血の巡りが悪くなる状態が高血圧ですので、降圧剤で血管を広げると血の巡りがよくなります。動脈は高血圧、高コレステロール、タバコや運動不足で硬くなっていき動脈硬化を来します。動脈硬化は神経への血流を悪化させますので、神経が障害されてしびれは起こりやすくなります。

ウィルスも神経に悪さをします。水疱瘡のウィルスは神経に長く潜んでいて、免疫が低下したときに帯状疱疹を起こし、強い痛みやしびれを起こしますが、普通の風邪のウィルスでもしびれ、関節痛、胸痛など神経の障害を起こしてきます。

しびれに対するアプローチでは、神経の環境をいかに改善するかという事になります。

血圧、動脈硬化、糖尿病、コレステロールなどの脂質異常、尿酸、体液量、貧血、ミネラルのバランス、整形外科的問題、ウィルス、筋肉の問題などを改善しましょう。具体的にはカフェインを控え、PCやスマホのブルーライトをカットし、よく寝て、適度な運動をして、お酒は赤ワイン1杯迄、タバコを止めて、塩分は適度に摂り、緑の葉を中心にいろいろな色の野菜を摂り、豆腐や海苔を摂り、塩分は適度に摂取し、豚肉を週2回食べ、飲酒や糖質の過剰を改善し、お酢を適度に摂り、ゆっくりお風呂に入り、入浴剤を入れ、体を温め、歯を良く磨くことでしょう。

しびれを治すには神経を取り巻く環境の原因除去を必要とします。貧血改善、降圧や動脈硬化改善による血流改善、神経の圧迫解除、体液や栄養の管理などです。原因が除去できない場合には、神経の症状に対する直接的な薬物治療を試みることになります。例えば糖尿病による神経障害ではメキシレチンという薬が有効なことがあります。腰椎滑り、頚椎症、脊柱管狭窄や帯状疱疹後の神経障害によるしびれに対してはタリージェ、リリカなどの末梢神経障害性疼痛の治療薬が有効であることがあります。内科ではイワシの油であるEPAにより血行を改善し、葛根湯、補中益気湯や人参養栄湯などカンゾウを含む漢方が体液を増やすことで、しびれの改善に効果的です。

まとめ

しびれは神経の知覚神経の障害の一つで、末梢神経、中枢神経と取り巻く環境により改善される可能性があり、投薬による改善も期待されます。(爽心会 心臓クリニック藤沢六会 磯田 晋)