脈波計測で若い方の自律神経緊張と血管収縮がわかる。
体の血管や心臓の冠動脈が収縮しやすい体質の若い方がいらっしゃいます。多くの方はご両親あるいは祖父母に狭心症、不整脈、腎不全や脳血管障害の方が見受けられます。運動時の息切れ、動悸、期外収縮、胸痛、胸の締め付けや冷え性などを自覚する若い方は、体の血管が締まりやすかったり、冠動脈が収縮しやすかったりする体質が隠れている事が多いようです。体の血管と心臓の冠動脈の収縮しやすさが必ず一致するわけではありませんが、両方を持っている方も少なくありません。
ABIやPWVを調べる脈波検査は主に中年以降の方の動脈硬化を調べるのに有効な検査です。両手足で同時に血圧計をつけて血圧と脈波を調べますが、まずは手の血圧よりも足の血圧が低いときはABI(足の血圧/手の血圧)が低下し、足の動脈に狭窄や閉塞が疑われます。また手の血圧より足の血圧が1.4倍以上高いときは、足の動脈が固いことを示します。心臓から送られてきた脈波を波に例えれば沖からやってくるうねりに相当します。足の動脈が柔らかければうねりは砂浜に打ち上げて高いしぶきを上げませんが、足の動脈が固いと岸壁にうねりが打ち当たってしぶきを上げるように、足の脈波は高く尖るようになります。PWV(脈波速度)は脈が伝わる速さを見ます。ゴムのように柔らかい血管では脈はゆっくり伝わりますが、金属パイプのように固い血管では脈が速く伝わります。
さて動脈硬化の少ない若い方では狭窄や閉塞がなくてもABIが低下することがあります。足の血管が柔らかいので手の血圧よりも足の血圧が低くなってしまうためです。PWVが高くなり、あたかも血管が固そうな数値を示すことがありますが、これは自律神経の興奮によって体の動脈が締まってしまうために、あたかも血管が固いかのようなデータを示すためで、10代の方が中年以上の血管年齢を示すこともあります。緊張しやすい方、冷え性の方、動悸、胸痛、胸部の締め付けや運動時の息切れを示す方に多いようです。症状があり脈波計測で異常値を示す方は、ホルター心電図という1日心電図で自律神経緊張による脈拍の変化や冠動脈の収縮を示す方が多く、またトレッドミル運動負荷検査などで運動時の高血圧や頻脈、冠攣縮による心電図変化をきたす方が多いようです。中年以降の方で硬くなった動脈を若返らせるためにはEPAというイワシ油を用いますが、若い方の締まりやすい血管を広げるのにもEPAは有効です。
まとめ:脈波計測は中年以降の動脈硬化を調べる簡単な検査ですが、若い方の自律神経の緊張しやすさや体や心臓の動脈の収縮しやすさを調べる検査としても有用です。(爽心会 心臓クリニック藤沢六会 磯田 晋)