心房細動と言われたら

1. 心房細動とは? 

元々心臓にはリズムどりをする社長さんである洞結節が右心房にいて、今だよ、という指令を1秒1回送りだします。すると0.2秒後に、リズムを心室に伝える部長さんである房室結節が社員である心室に指令を出して、心臓はドッキンドッキンと動きます。左心房には副社長さんがいて社長の控えをしているのですが、左心房に傷がつくと興奮して社長さんを追い越して指令を出すようになります。この指令が心房を球場に見立てるとウェーブのようにぐるぐる回ると、社長の指令が通らなくなって部長さんがウェーブのリズムをもとに指令を社員である心室にランダムに送るようになる。これが心房細動です。

2. 問題は? 

心房細動は6%ぐらいの方が生涯に発症しますが、なると困るのは3点、脳梗塞になりやすくなる、心臓の機能が落ちる、ドキドキするです。まずは脳梗塞の問題から、社長さんの号令で動けば心房は全体が同時に収縮しますが、秘書さんがペチャクチャの心房細動では心房はぶるぶる震えるだけで収縮しません。左心房には左心耳という小部屋があって、心房細動になると血液が洗い流されなくなるので血栓ができて脳に飛びやすくなります。年齢などにもよりますが、ざっくり普通年1%脳梗塞のリスクがある方が年5%脳梗塞になるリスクに増えるのが問題です。次に心機能は約2割下がります。心房は収縮することで心室というメインのポンプに血液を押し込んで、心室が力を発揮しやすくします。弓に矢をつがえて飛ばすのと似ていますが、矢をつがえる力が血液の圧力と左心房の収縮ですので、心房細動で矢をつがえる力が落ちると、矢は遠くまで飛ばない、心臓の血液を送り出す量が減ることになって、息が切れやすくなりますね。3番目の動悸は人によります、全く感じない方もいれば、辛くてしょうがない方もいます。

3. 原因は? 

遺伝、甲状腺、高血圧、糖尿病、弁膜症、狭心症、心不全、動脈硬化、スポーツ心臓、自律神経失調、タバコ、酒、カフェイン、睡眠不足、脱水、ミネラルバランス、頻脈、などなどいろいろありますね。アブレーション手術で治してもらっても原因がそのままだと再発しやすい事に気をつけましょう。原因を調べる検査としては、レントゲン写真で心拡大や心不全、採血で甲状腺機能の異常、心臓のホルモンの上昇、貧血、脱水、ミネラルバランスを確認します。脈波計で動脈硬化も調べましょう。心エコーで生まれつきの病気や、弁膜症の影響や、左心室の壁が分厚くなったりして左心房に負担をかけていないかを調べます。次に1日心電図で心房細動が一時的か持続的か、狭心症がベースにないか、脈の調節が適切かを検討します。3番目に運動負荷試験で冠動脈に狭窄がないかを確認しましょう。

4.アブレーションの前にやるべき治療は?

心房細動では、まず脳梗塞を防ぐこと、次に脈を整えて心臓の加齢を防ぐこと、電気ショックや抗不整脈薬で治せる可能性を検討してもらうことです。脳梗塞を防ぐには血がよどんでも血栓ができないようにDOACあるいはワーファリンという抗凝血薬が必要です。ワーファリンは月1回採血が必要で納豆が食べられませんが安価です。DOACは薬代だけでも3割負担で月4000円ぐらいかかりますが納豆が食べられて採血の必要がありません。脈が速いと心臓がへばりますので、β遮断などの薬で脈を整えます。

5.アブレーション

心房細動アブレーションは年々安全になり、施設にもよりますが、より複雑な心房細動にも治療の可能性が増えてきました。術前2-3回程度の外来、患者さんによっては術後ペースメーカーの必要性の確認、2泊3日程度のアブレーション入院、数時間の本番、術後3回程度の外来受診が一般的ですね。アブレーションはカテーテル手術です。足の付け根の静脈からプラスチックの管を入れて、左心房に管を進めて、カテーテルの先で悪い不整脈の原因を除去します。電子レンジの熱源であるマイクロウェーブや凍結を利用して行います。順調に経過して心房細動の再発がない事が確認できると、費用と出血のリスクのある血液凝固を終了し、高血圧や頻脈など再発予防に必要なコントロールに戻ります。

6.アブレーション後 再発予防が大事です、一度心房細動になった方は、アブレーション後も再発する可能性があります。血圧、脈拍、動脈硬化などの全身管理を続けて再発を防ぎましょう。