自律神経を整える 1. 生活習慣

自律神経は我々が起きている時も、寝ている間も全身の内臓をコントロールしている神経です。自律神経が乱れると、動悸がしたり、胸が痛くなったり、息が苦しくなったり、お腹の調子が悪くなったり、体の不調が起きてきます。自律神経は自分の中にいる他人のようなもので、ほぼ自分の思うようにはいきません。さて自律神経を整えるために自分でできることは何でしょうか? 生活習慣と食生活から考えていきます。

  1. タバコ これは最も自律神経を乱して、体に悪い生活習慣です。タバコには3つの毒があります。タールが肺癌だけでなくほぼ全ての癌について約2倍にします。ニコチンは強力な血管収縮薬で血管内皮細胞を脱落させて、脳、心臓、腎臓、全身の血管を収縮させ、老化させます。また一酸化炭素が体の酸素供給を減らして全身を加齢させます。ニコチンは冠動脈に作用すると冠攣縮性狭心症を起こしますので、冠攣縮の素質のある方にとっては命に係わる習慣ですね。血流は神経にとって、とても大事な要素ですので自律神経全体の大きな障害です。こういった毒性が10あるとして、メリットが1つあってこれがタバコの問題です。脳のドーパミンを増やす、これがタバコの毒を知りつつ引っかかってしまうポイントです。朝日を見ると脳に出るドーパミンがタバコで得られるわけですから、残念ながら一服にちょうどいいわけです。覚せい剤のように高額納税者がoverdoseで亡くなって税収が減る事がなく、麻薬のように勤労意欲が下がってアヘン戦争で国を失うわけでもなく、ほぼ定年まで働ききって税金を納めて、7年早く天国に行って年金を1500万円払わずに済むわけですから、国にとってこんなにおいしいビジネスはありませんよね。たばこ代1000万円、医療費500万円、合わせて3000万円、こんなもったいない贅沢はなかなかありませんので、早めに禁煙をお願いします。特に冠攣縮性狭心症と言われた方でタバコがやめられない方の中で、重症の発作が起きて命にかかわったり、寝たきりになったりする方がいらっしゃいます。
  2. 深酒 アルコールは摂取により健康を害することはわかっていますが、例外は赤ワイン1日1杯で、含まれるポリフェノールのおかげでアルコールの害が中和されるようです。それ以外のアルコールは摂取すればするほど不健康であることがわかっています。アルコールの利尿効果で塩分と水分の喪失により血管の虚脱と血の巡りの悪さを起こします。また利尿の際にカリウムやマグネシウムといった血管や脈拍の安定に重要なミネラルを排出しますので全身が不安定になりますね。飲酒後にラーメンを食べたくなるのはアルコールによる水分、塩分とミネラルのロスを体が補おうとしているからですね。飲酒に際しては、水分、塩分、野菜おかずによるカリウム、豆腐海苔海産物によるマグネシウムなどをおつまみや経口補水液などで摂取することを意識しましょう。なおお酒は飲みだすと飲みすぎる事が理論的に証明されていますが、酒の飲みすぎをコントロールする薬が実はもう市販されていて、現在は一部の専門家のみが処方できますが、一般の内科医が処方できるようになれば福音となりそうですね。
  3. カフェイン コーヒー好きな方多いですよね、カフェインによる覚醒効果、脈拍と血圧の上昇、利尿効果などが苦味と混ざりながらいつの間にか癖になってしまうようですね。カフェインは朝日を浴びるように自律神経を興奮させますので、これから仕事というときにはふさわしいですね。エナジードリンクもカフェインを多く含んでいます。メリットの一方でカフェインの合わない方がいらっしゃいます。カフェインはコーヒー1杯100mgですが、1000mgで死亡例の報告があります。自律神経が敏感な方は大好きなコーヒーで脈が乱れることもありますのでご注意ください。カフェインが苦手でコーヒーが好きな方は、デカフェ、あるいはカフェインレスのコーヒーがありますので、お試しくださいね。聞いた話では〇〇バックスにはおいしいカフェインレスコーヒーがあるらしいですね。早く自動販売機でもカフェインレスを選べるようになるといいですね。お酒と同じで、カフェインは大量にとっても大丈夫な方と、少量でも体調不良を引き起こす方がいらっしゃいますので、一概に悪いと決めつけるではなく、良いと決めつけるでもなく、自分の感受性をご検討ください。ところでお茶に含まれるテオフィリンはカフェインに似ていますが、カフェインン比べると自律神経の障害はあまりないようです。また紅茶に至ってはテオフィリンもお茶よりとても少ないので問題になりませんね。
  4. ブルーライト ブルーライトは現代の自律神経失調、頭痛、全身疲労、肩こり、眼精疲労の大きな原因です。テレビのビタミン剤の宣伝を信じる前にブルーライトをカットしてみましょう。ブルーライトはパソコン、スマホ、テレビ、車のヘッドライトなどで氾濫しておりますが、その毒性についてはまだ認識は控えめですね。ブルーライトは就眠前に浴びると睡眠障害を引き起こすのは知られつつありますが、ブルーライトによる自律神経の障害はあらゆる全身臓器の障害の原因となることを認識する必要があります。ブルーライトカットというと眼鏡、モニターにシールを張るのが知られていますが、費用ゼロでできるブルーライトカットはあまり知られていないようです。例えばマイクロソフトのPCでは設定→システム、モニター→夜間モード→ブルーライトのカットができるようになっていますが、設定することで商売上儲かる人もいらっしゃらないので、ネット上の情報でも広くは知れ渡っていないのが現状ですね。スマホでは、設定→画面の明るさ→night-shiftで設定できます。ゲームなどで興奮すると交感神経の興奮で瞳孔は広がりますので、ブルーライトの障害をより受けやすくなりますね。ところで最近免許更新の講習会でハイビームを推奨したり、新車の過剰な照度のライトや追加ライトを許容していますが、ブルーライトを過剰に浴びるドライバーの健康を害しますので、安全の許す範囲で適切に管理していただきたいものです。LED照明には電球色と昼光色がありますが、自律神経の乱れやすい方は、ブルーライトの少ない電球色を選んでくださいね。
  5. 睡眠不足 睡眠不足が体に悪いのは皆様よくご存じだと思いますが、それこそコーヒーを飲みながら頑張ってしまう方は大勢いらっしゃいますね。動悸、胸の締め付け、末梢の冷え、胃腸の障害など様々な障害をもたらします。寝付けない為に睡眠不足になっている方は、前述のブルーライトの障害をまずチェックしてください。寝る前にスマホ、パソコン、TVなど浴びていることは多いですね。就眠の1-2時間前はできるだけブルーライトを浴びないようにしてください。入浴後に眠るのは自律神経のリラックスの効果も加えて、入浴中にはブルーライトをあまり浴びないという意味もありますのでゆっくり入浴しましょう。晩御飯の内容も考えましょう。ご飯など糖質の比率が多い方は食後2時間で急速に血糖が下がってきますので低血糖で目が冴えてしまうことがあります。ホットミルクを不眠の子供に飲ませますが、牛乳は蛋白と脂質が入っていて高血糖も低血糖も起こしにくいのは睡眠に有利です。魚などのたんぱく質、大豆、オリーブオイルなどの良質の脂質を夕食に摂取するよう心がけましょう。ストレスや考え事で眠れなかったり、途中で目が覚めてしまう方は、睡眠薬の使用も検討しましょう。自律神経失調の方は薬に対しても敏感な方が多くいらして、睡眠薬なんて癖になって体に悪いと思い込んでいる方が多くいらっしゃいますが、現在は癖になったり、長期服用で認知症が起こったりすることのないデエビゴ、ベルソムラ、ロゼレムなどの睡眠薬のチョイスがありますので、眠れなかったら試してみる価値がありますね。また同じことは安定剤にも言えます。考えすぎて眠れないぐらいならメイラックスなどの超長時間作動型の不安薬を使用するのもいいと思います。この薬は切れ味がちょっと鈍くて、完全に効果が切れるのに約1週間かかりますので、他の安定剤のように飲むと調子が良いが、翌日薬が切れて調子が悪くなりまた飲まなきゃ、という依存心が芽生えにくいですね。いずれにせよ仕事-運動-食事-入浴などによるリラックス-良好な睡眠のリズムを大事にしたいですね。
  6. 運動不足 適度な運動は自律神経の安定のために欠かせません。よく安静か運動かといった2択で考える方がいらっしゃいますが、自分に合った適度な運動を探してください。ちょっと汗をかくというのがいいと思います。運動によって自律神経が興奮して、安静にすると自律神経が休息する、この変動を自分で作ることで、体の外から入ってくるストレスに鈍くなることができます。とあるスケートの金メダリストは子供のころ喘息持ちで、自律神経の乱れが気管支の攣縮、すなわち喘息を誘発していたわけです。スケートに打ち込んで自律神経を運動で揺さぶることで、自律神経の乱れが起こらなくなり、喘息は治ってしまったそうです。もちろん過剰な運動は必ずしもいいわけではありません。テニスプレーヤー、元駅伝選手、マラソン好きの方など肉体的に健康に見えても、おそらくは自律神経の乱れからくる不整脈などをお持ちの方は多いようです。自分に合った適度な運動を心がけましょう。朝日というブルーライトを見る事、適度な仕事の緊張、運動、休息、食事、赤ワイン1杯、入浴、など、いずれも適度な自律神経に対する負荷は健康の維持に好ましい事と考えられます。
  7. 歯磨き 日本人の80%が歯周病を持っているといわれます。歯周菌は飲み込まれて腸内細菌叢を悪化させます。腸内で繁殖した細菌が血中に移行すると、全身の血管を劣化させて、自律神経の乱れにも通じます。お勧めはまずは電動歯ブラシです。高いものでなくて、数百円のprosonicでも手で磨くのと比べると5-10倍の効率で歯が磨けます。1回10分間以上を歯磨きにかけられる人は別として、現代人には電動歯ブラシを使うのがお勧めで、50%の歯垢を除去できます。次は歯間ブラシです。小林製薬の糸ようじなどを用いると歯の間にある40%の歯垢を除去することができます。最後に残った10%はマウスウォッシュで除去しましょう。腸内細菌叢の安定は自律神経の安定と長生きに大きな意味を持っていますので、発酵食品の摂取と並んで大事にしてくださいね。(爽心会 心臓クリニック藤沢六会 磯田 晋)