降圧薬の選び方 2 利尿剤、β遮断薬、α遮断薬、合剤、その他

次は利尿効果がある降圧薬が第3の降圧薬として用いられます。カリウムを保持するMRB、サイアザイド利尿薬、ループ利尿薬などが用いられます。カリウムを保持するMRBはARB、Ca拮抗薬に続く第3の降圧薬として用いられ、心不全の方の寿命を長くする効果があります。スピロノラクトン(アルダクトン)は古くからあり、安価ですが、男性で乳頭違和感をきたすことが時に認めます。その際にはエサキセレノン(ミネブロ)やエプレレノン(セララ)などが用いられます。サイアザイドは古くから用いられる利尿薬で、トリクロルメチアジド(フルイトラン)が用いられます。足の浮腫や息切れなどの心不全にはアゼソミド(ダイアート)やトラセミド(ルプラック)が用いられ、予後の延長効果があります。浮腫を取る切れ味ではフロセミド(ラシックス)が用いられますが、低カリウムを起こしやすいために不整脈をきたしやすく、予後延長効果はないために、降圧薬としてはさほど用いられません。

β遮断薬は長い歴史を持つ降圧薬です。脈をゆっくりにする効果が強いので動悸や頻脈の治療によく用いられます。脈が速くなると心臓に負担がかかり息切れや胸痛を来すので、狭心症治療や心不全治療にも用いられます。自律神経の興奮によって来院時や外出時に血圧が上がる白衣高血圧は、家にいる時の血圧は正常ですが、外出や買い物など表に出るたびに脈と血圧が上がり、心臓や血管の加齢が進んでいきますので治療が必要です。β遮断は自律神経の興奮を心臓血管に伝えるのをブロックしますので白衣高血圧の治療に向いています。次は運動時高血圧です。トレッドミル検査などの普及により、安静時に正常血圧の方が運動時に高血圧になる方が多くいらっしゃることがわかってきました。基本的に若いころは運動時に血圧が上がることは珍しいですが、壮年期以降は安静時に正常血圧の方が運動負荷によって血圧が200を超える方も珍しくないことがわかってきました。折角健康増進のために運動しても、運動するたびに血圧が200を超えているようでは健康増進というより心臓や血管が加齢してしまい不健康となってしまいます。スポーツが好きな方で心房細動になってしまう方をよく拝見しますが運動時高血圧はその原因の一つでしょう。β遮断薬は運動時の交感神経興奮による血圧上昇と頻拍を抑えますので、運動時高血圧を抑えることができます。β遮断薬は心臓と血管を守る効果が強い反面、指先や頭皮の血流には血流がめぐりにくくなりますので、冷え性や脱毛に注意する必要があります。β遮断は脈を落とし、末梢血管を締めます。一方α遮断は末梢の血管を広げますので、β遮断とα遮断を持っているカルベジロール(アーチスト)は冷え性や脱毛はいくらか起こりにくいです。β遮断薬の中には気管支を収縮する成分が入っているものもありますので、喘息や咳の出やすい方はビソプロロール(メインテート)を選ぶ必要があります。ただこの薬を多く製造していた会社が不祥事で供給停止になっていますのでR3年11月時点では供給不足となっております。

α遮断は末梢の動脈を広げますので、冷え性のある方にはメリットがあります。ただし血管の広がりによって立ち眩みを起こしやすいのが副作用です。α遮断薬としてはドキサゾシン(カルデナリン)が主に用いられます。

次に合剤ですが、降圧剤1種類では降圧に限界があり、中等症、重症の方では2種、3種と追加していくことによって目標とする130/80以下を達成することができます。数が多いと内服する側の気分がすぐれませんので、Ca拮抗薬とARBの合剤、あるいはARBとサイアザイド利尿薬の合剤が広く用いられます。

精神安定剤も時に降圧に用いられます。緊張によって一過性に血圧が上昇する方は高齢の方に多く、精神安定剤が結果的に降圧薬として働く方も中にはいらっしゃいますが、現代の降圧薬としてはカウントされていないと考えます。

末梢が締まっていることで血圧の上下差が多いかたには、EPAすなわちイワシ油、イコサペント(エパデール)がサプリであると同時に医薬品として役に立ちます。末梢の血管床を開くことで血圧の上下が安定します。また甘草の入っている葛根湯は体液を貯留することで血圧を5ぐらい上昇させることがありますが、冷え性で血管の締まっている方は漢方で体液を増やして、EPAで末梢血管を開いて、血流を安定させることで血圧や末梢血行を安定させる効果があり、頭痛やめまいの改善にも効果がありそうです。

薬ではありませんが減量は降圧に最も効果があります。2-3kg痩せると降圧剤は1段階減らすことができますね。薬が多すぎるといいながら、食べ過ぎている方は、ぜひ糖質ダイエットに挑戦してください。