動悸と胸痛を整える3 食生活

脈を整え、血管収縮を防ぐ主な電解質はカリウムとマグネシウム、血管や血流を支える電解質はナトリウムすなわち塩分で、そして水分が必要です。

カリウムは細胞の中に多く含まれます。野菜、魚、肉などおかずに含まれると思ってください。果物にも多く含まれますが、果糖は肥満の大きな原因となりますので体重が気になる方がカリウム上げるにはバナナよりもトマトやキャベツなどの野菜が好ましいですね。ごはん、麺、芋などは炭水化物ばかりでカリウムは少ないのでご注意を。ちなみにラーメンは具が乗っていなければ、塩分、炭水化物、脂質の塊ですので食べる時には具やおかずを食べないと不健康ですね。大人になったら素うどん、素ラーメンはやめた方がよさそうです。

マグネシウムはカリウム同様に頻脈、血管の攣縮、足が攣るのを防ぐ大事なミネラルです。豆腐のにがりが塩化マグネシウムですので豆腐、特に木綿ごし豆腐に多く含まれています。その他、海苔、海藻、貝など海産物に多く含まれます。

ナトリウムすなわち塩分は血圧をあげる原因として目の敵にされていますが、動悸や冠状動脈の攣縮によって起きる狭心症である冠攣縮性狭心症、異型狭心症、安静狭心症では不足により発作が起こりやすくなります。塩分が不足すると水分を血管内に保持できなくなり、血圧が低下して、末梢の血流が保たれなくなります。熱中症がまさにこの病態ですね。血圧が低めで動悸や胸部の締め付けや痛みのある方は積極的にお味噌汁を飲んだ方が好ましいと考えられます。もちろん血圧の高い方、血圧を測ったことのない方、採血をしていない方、薬を絶対飲みたくない方はとりあえず塩分控えめにしておいてください。クリニックにかかってナトリウム濃度を計測し、血圧手帳をつけ、薬を特別嫌がらない方は塩分の過剰な制限は必ずしも有益とは限りません。味噌、ぬか漬け、おしんこなど優れた発酵食品は腸内細菌叢を改善して脳心腎血管の状態を改善しますので、かかりつけ医にご確認の上、摂取しておきましょう。確かにかつて降圧剤の種類が乏しかった時代には塩分制限がほとんど唯一の高血圧治療でありましたが、オーダーメード医療の現代では塩分を積極的に取りつつ採血でモニターしながら、投薬で血圧や血管攣縮をコントロールしていくことで状態が改善する方は少なからずいらっしゃると思います。典型的には若年、体重が少な目、血圧はいつも低めと言われている女性の中に塩分摂取の足りない方がいらっしゃるようです。逆に高齢、肥満、高血圧、糖尿病の方はリスクが高いので原則塩分の積極的摂取はお控えいただき、主治医にご相談ください。

元々人間は海から生まれたわけで、体の中に海と同じ状態を体液として再現して生きています。ナトリウムやマグネシウムは海そのもの、そしてカリウムは細胞そのものと考えると理解しやすいかもしれません。