動悸とコーヒー
動悸の原因がカフェインであることがあります。動悸とは心臓の鼓動を感じる事なのですが、元来心臓はおとなしい犬のようなもので、普段は自分から存在感を示すことはありません。よほど辛いのか、何か訴えたいことがあると犬がキャインと言うように、心臓が自己主張することになります。
心臓は自律神経の制御を受けています。自律神経は血管、呼吸、消化器、腎臓、膀胱など様々な臓器を我々が知らない間に制御しているインフラのライフラインです。自分の体は皆さん自分のものだと思っていますが、自分すなわち自己の意識は、体という国の王様や女王様のようなもので、国内のほとんどのコントロールは、王様女王様の手から離れた運営団体である自律神経たちに委ねて、国内の産業である臓器たちのバランスを保っています。
例えば、仕事や人間関係のストレスは我々の意識を通じて、自律神経にシグナルを送ります。自律神経が興奮して、心臓の脈を刺激すると心臓の脈が増えてこれを動悸として感じることになり、ここで自分が自分の緊張に気づくことになります。
自律神経に入る情報はストレス、寒冷、睡眠不足、風邪、ホルモンバランスなど様々ですが、ここでは生活習慣について考えましょう。電解質ではカリウム、マグネシウム、塩分が大事ですね。カリウムは野菜、果物やおかずに含まれていて、これが欠けると細胞内のカリウム不足から夏バテになり、不整脈が増えて動悸になりやすくなります。マグネシウムが欠けると足がつったり、胸キュンのような冠動脈痙攣による狭心症が起こりやすくなったり、不整脈が増えますので、豆腐のにがりがマグネシウムなので豆腐や海苔、海産物がお勧めですね。塩分については巷で減塩が口うるさく言われていますが、足りなくなると体液が不足して脱水状態になり不整脈、冠攣縮や立ち眩みは起こりやすくなりますね、味噌汁やお漬物などの発酵食は腸内細菌を整えるのにも有効ですので摂取をお勧めします。血圧が高めなので塩分は、と気にする方は多いのですが今時採血と血圧管理している方はNa濃度も調べていますし、降圧剤のない時代ではありませんので塩分不足による脱水のリスクも考えて、採血結果のNa濃度のレベルを確認するともう少し塩分をとってもいいのかがわかりますね。
次に嗜好品です。普通のコーヒーにはカフェインが入ってますので、動悸のある方はデカフェ、カフェインレス、ノンカフェでお願いします。お茶に含まれるテオフィリンは多少覚醒、気管支、脈に影響しますがカフェインよりはずっとマイルドです。紅茶にはテオフィリンはほとんど入ってませんのでまあ問題ありません。エナジードリンクやリポDなどにはカフェインが入っていますので動悸のある方や胸痛のある方にはお勧めしませんね。お酒はアルコールそのものに不整脈誘発作用がある以外に、利尿効果による脱水、カリウム、マグネシウム、塩分の排泄を促進しますので、つまみの種類や飲酒後の水分摂取に気を付けてください。深酒の後は不整脈や冠攣縮は起こりやすくなりますね。
モニターやスマホの高照度とブルーライトも自律神経を刺激します。暗いところで明るいスマホを見るのは開いた瞳に多くのブルーライトが飛び込むので睡眠の妨げになり自律神経が不安定化しますね。自分のモニターで仕事する方は歯車マークからモニターに入ってブルーライトカットしてくださいね。自分は常時70%カットしてます。職場のモニターで照度やブルーライトをいじれないときは眼鏡をブルーライトカットにするといいかもしれませんね。
薬では、自律神経から心臓に伝達するβ刺激をブロックするβ遮断薬、血管の収縮や心臓の電気伝達を整えるCa拮抗薬、抗不整脈薬、古典的ですが効果のあるジギタリス、症状を抑える救心のような漢方薬などが用いられます。
動悸が止まらないときは、交感神経を抑制するために、深呼吸、息こらえ、冷たい水を飲む、目の上やあごの痛いツボを押す、スポーツドリンク摂取、動悸の頓服薬などの順番になります。
動悸の原因を知っておくことは大事です。洞性頻拍と言って元々のリズムどりをする社長さんである洞結節が刺激で早くなっている場合、控えのリズムどりをする副社長さんや社員が出しゃばっている期外収縮、心房の中を異常な信号がウェーブのようにぐるぐる回る心房細動などいろいろありますが、心房細動は心房が震えているせいで血液の洗い流しができずに血栓ができて脳に飛ぶと脳梗塞になります。ホルター心電図という1日心電図を測ると動悸の原因がわかります。また今までなかった動悸が出てきたとすると、何か心臓に負荷が増えている可能性がありますね。高血圧、自律神経の失調、電解質、狭心症、弁膜症など隠れている基礎疾患をさぐることも大切です。胸部X線、採血、心エコーや運動負荷心電図などで調べましょう。