サプリEPA　PPIに警告　腎臓 透析にならない

イワシ油：EPA

世の中にはサプリが氾濫していますね。政権の影響で少しでも医療費を減らせるなら、自分のお金で健康を維持してもらおうと、医師からみるとちょっと信頼度の低い、少人数を対象とした研究でトクホを名乗ってビジネスとしているのが現状かと思います。だってもし本当に効くなら、きちんと申請して薬品として採用されますから。

さて、そんな中で自分が信頼を置いているのはイワシ油のEPAです。イヌイット（エスキモー）と日本人の寿命が長い疫学から開発されましたが、イワシを3～9匹分のEPAを毎日摂取することで、高脂血症の方の心大血管のトラブルを５年間に２割減らすことがわかりました(1)。

特に中性脂肪が高く、善玉コレステロールHDLが低いハイリスクの方では、５年間で５割！の減少を冠動脈病変トラブルにをもたらす事がわかりました(2)。

げっぷが臭くなるのとお通じが柔らかくなるほかには、ほとんど副作用はないのですが、キウイとの食べ合わせで下痢をきたした方がいらっしゃいました。リスクを減らすだけでなく、飛蚊症が無くなった方、物忘れが治った方、めまいが無くなった方、体調がよくなった方、髪の毛が伸びるようになった方、爪がきれいになった方、Heberden結節の痛みが取れた方など３割ぐらいの方に自覚症状の改善が見られます。
怪しげなサプリにはまっている場合ではありませんね。

PPI「Proton Pump Inhibitor（プロトンポンプ阻害薬）」に警告

腎臓 透析にならない

循環器医から見る腎臓の話ですので、腎臓内科の先生にご批判を受けるかとは存じますが循環器として透析にならないためにできることを考えたいと思います。

まずは糖尿病のコントロールです。糖尿病には血糖を下げるインスリンが出せない１型（5％）と膵臓からインスリンは出てるのに相対的に不足してしまう２型（95％）に分けられます。１型の方はインスリンの注射が必要なので基本糖尿病の先生にお任せするとして、２型の方は遺伝的因子に生活習慣病の因子が加わって発症しますので、減量や運動でインスリンの抵抗性を改善したり、インスリンの分泌を刺激する薬物の内服などで改善することができますね。
糖尿病のコントロールで測る指標にHbA1C（ヘモグロビンエーワンシー）があります。正常は6.2以下ですが糖尿病のコントロールでは7.0以下を目指していきます。HbA1Cは過去１か月の血糖値が反映されますのでその日の食事には左右されませんね。わかりにくいのでA1Cが7だったら37℃の微熱、8だったら38℃の熱、9-10なら39-40℃の高熱と思いましょう。糖尿病は細小動脈障害を起こしながら動脈硬化を進行させます。腎臓は血液をろ過する血管の塊で、糸球体という細い血管の塊で尿が作られるのですが、この糸球体が壊れていく糖尿病性腎症を含めた糖尿病性の腎臓病が進行すると透析になります。透析の44％の方が糖尿病由来とされています。

糖尿病の治療薬には種類がありますが、循環器ではSGLT2という比較的新しい糖尿病治療薬が安全で心臓腎臓に良いことがわかり、よく用いられます。血糖が高いので尿に糖が出るので糖尿病なのですが、尿の中に毎日50ｇの砂糖を出して血糖を下げるのが主な機序になります。SGLT2は糖尿病をよくするだけでなく、利尿効果で心不全を改善します、また腎臓の障害を直接改善する効果があり、腎障害のある患者の透析に陥るまでの期間を平均2.5倍に延長しました。透析迄あと10年の方が25年に延びたら生涯透析のお世話にならずに済むかもしれません。糖尿病は腎臓だけではありません。失明の原因になる糖尿病性網膜症、しびれ、痛みを来す糖尿病性神経症、何より動脈硬化の原因となって心筋梗塞、心不全、脳梗塞、足の壊疽などを起こしますのでしっかり治療しましょうね。

さて腎臓障害に戻りましょう。高血圧はその大きな原因ですが、１割ぐらいの方は高血圧の進行より腎障害の進行が速いことがわかり、アルドステロンという塩分と水分を体の中に保持するホルモンを過剰に分泌する原発性アルドステロン症がその原因と解明されつつあります。高血圧のほとんどは本態性と考えられてきましたので、診断の付いた方は高血圧の方の10％にはまだまだ届いていません。低カリウムの方、降圧剤の効きの悪い方に多いようです。高血圧の方は１度はアルドステロン/レニンの比（＞200で診断）を測っていただきたいと思います。アルドステロンをブロックするミネラルコルチコイド受容体ブロッカー（MRB: mineral corticoid receptor blocker）には古くからあるアルダクトンA®と最近発売されたセララ®、ミネブロ®があり、早期から起きてくる腎障害を防ぐことが期待されています。

次はタバコです。タバコは透析の原因である慢性腎障害を2倍にすることが知られています。肺がんのことは誰でも知っていますが、透析になるリスクも２倍以上と考えられますので、気にしてもらいたいものです。
糸球体腎炎という病気があります。リウマチ熱という溶連菌感染を治すための体で作られた抗体が腎臓を間違えて傷害してしまう自己免疫の病気です。連鎖球菌感染は小児に多く、時にウィルスによる風邪と区別がつきにくく、はっと気が付くと腎障害ということが起こります。扁桃腺炎と言われたら「溶連菌は大丈夫ですか？」と先生に聞いてくださいね、抗菌剤で治療できます。最近は風邪に抗菌剤は効かないというキャンペーンを政府主導でやっていますが、その風邪に溶連菌感染が紛れていて腎障害になったら大変です。

クレメジン®という薬、知ってますか？腎臓が悪くなった方が透析を避けるために飲む活性炭です。腎臓内科のDr以外はこれを対症療法で透析になる期間には影響ないのでは？と思ってきましたが、尿毒症の原因物質を吸着することで20％透析になるのを遅らせることがわかってきました。さてそうすると先ほどのSGLT２の2.5倍と組み合わせたら３倍です。計算上はあと10年があと30年に延びるかもしれません。データはまだ出ていませんが透析を避けたかったらやる価値がありますね。

腎臓の動脈硬化が透析の原因として増えています。動脈硬化を防ぐには、心臓の治療と同じですね、血圧を下げ、タバコを止め、尿酸を下げ、糖尿病を管理、お酒を控えて脱水に注意、運動して、痩せて、悪玉LDLを下げるためにスタチンを服用し、魚を食べて、心臓血管のトラブルを20-50％減らしてくれるEPAを飲みましょう。透析を避けたかったら、全部やりましょう。透析は週３回、１回3時間、大変ですから。では今、透析を受けている方はもう関係ないのでしょうか？いえ透析の方こそ全部やってください、透析の方の心臓血管トラブルはとても多いのです、遅すぎることはこれっぽっちもありません。